東京都には、戦後の復興計画からそのまま塩漬けになっている都市計画道路が数多くある。そのひとつが、世田谷区桜三丁目から練馬区赤塚二丁目まで約15.9kmにわたって計画されている「補助第133号線」だ。今回はこのうち、優先整備路線に選ばれている練馬・杉並・中野の区間を取り上げたい。
どんな道路なのか
補助133号線のうち、練馬区向山四丁目から春日町三丁目までの約1,240m・幅員16mの区間は、2016年に「優先整備路線」に指定され、東京都は2025年3月に事業着手のプレスリリースを出した。目白通りと環状八号線を結び、旧としまえん跡地に整備が進む練馬城址公園への避難路・物資輸送路としても位置づけられている。杉並区内では南阿佐ヶ谷・成田東エリアを縦断する区間、中野区の白鷺一丁目付近、世田谷区・杉並区境の区間も同じ路線として計画に含まれる。
行政側の説明は明快で、
- 練馬城址公園という広域防災拠点への避難路・輸送路を確保する
- 目白通りと環八をつなぐことで周辺の交通ネットワークを強化し、渋滞や抜け道利用による生活道路への車両流入を減らす
- 無電柱化・街路樹整備によって延焼遮断帯としての機能を持たせる
というものだ。杉並区内の現地では、消防車や救急車が細い生活道路を縫うように走らざるを得ない状況が常態化しているという住民の声もあり、南北方向の幹線が慢性的に不足している地域であることは地図を見れば一目瞭然である。
半世紀続く反対運動
この計画に対しては、1970年代からの反対運動が根強く続いている。杉並区では「都道補助133号線を反対する会」が長年活動を続け、測量への協力拒否を呼びかけるビラ配布やデモ行進を行ってきた。練馬区でも同様の団体が活動し、区の住民対話の場で道路計画への賛否を問う場になっている。
反対運動には日本共産党の地方議員も関与しており、杉並区議会・練馬区議会・東京都議会それぞれで、同党所属議員が計画の見直しを求める質問や広報活動を継続してきた。これは事実として記録しておく必要がある一方、反対運動自体は同党以外の地域住民・自治会関係者も多数参加する、政党の枠を超えた広がりを持っている点も踏まえるべきだろう。
何が問題なのか
行政側の課題:70年前の都市計画をほぼそのまま維持していることについて、住民から「今の街並みと合っていない」という疑問が出るのは自然なことだ。杉並区長が区議会で「一切、見直しはしない」と明言する一方、代替となる防災・交通対策の具体案を住民側に十分示せているかは検証の余地がある。事業が長期化するほど、区域内の建築制限や地権者の生活設計への影響は長引く。
反対運動側の課題:一方で、消防・救急車両の到達に時間がかかっている現状や、生活道路への抜け道流入という具体的なリスクに対して、反対運動側が代替案を提示できているかというと、そこは弱い。「見直せ」という主張だけで、防災・交通上の課題への具体的な代替策が伴っていない場合、行政側の「計画通り進める」という判断を覆す材料としては説得力を欠く。
いずれにしても、法にのっとった手続きを経て決定された都市計画である以上、見直すにせよ執行するにせよ、双方が具体的な根拠を示して議論することが必要だ。
今後の焦点
練馬区向山区間は事業着手段階に入ったが、杉並区内の南阿佐ヶ谷・成田東区間や中野区区間は依然として合意形成の途上にあり、今後も反対運動側からの働きかけが続くとみられる。防災上の必要性が指定から10年近く経っても実現していないという現実を踏まえ、都と区市には期限を区切った説明責任と、計画執行のスケジュールの明確化を求めたい。この路線の動きは、今後も注視していく。
出典:東京都都市整備局・建設局公表資料、練馬区・杉並区公式サイト、東京都議会・区議会各会派の議員活動報告、地域住民団体の公開情報等を基に構成しています。